違う事だよ。そして、君のホントの腹は前のようじゃないかね?……いや、だからと言って、僕は君をどんな意味ででも非難しようとは思って無い。たしかに、そんな態度も有るし、その方がホントかも知れんからね。ただ残念ながら、今のところ、僕はまだそんな風には考えきれない所でフラフラしているんだ。せめて、戯曲を書くことを、自分と言う人間のヤワさを鍛えに鍛え抜いて行く修業だと思って、やらして貰ってる。……その内には、もしかすると、何か少しは役に立つような物が書けるかも知れない。……書けないかも知れない。……その間、一所懸命にやるから、済まんけど、無駄飯を食べさせて置いてくれ。……生かして置いてくれ。……大げさな言い方をするようだが、それさ。
轟 ……(次第に坐り直し、頭を垂れて聞いている)
三好 先ず、地獄だ。世間も、そいから自分の裡もだ。神よ神よと叫びながら、しかし、自分の身体で、こいつの中をのた打ち廻って、思い捨てないで、毎日々々を、これきりだと思って、汗水を垂らして行くんだ。救いが、もし有るならば、そいで、実は、此処にしきゃ無い。地獄のほかに逃げ場所が有ると思えれば、そいつは、地獄じゃ無い。此処だ
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