じゃないか。
三好 なんて言う刀です?
堀井 さあ、なんでも国なんとか言ってた。銘は、たしか入って無いよ。……しかし斬れるにゃ斬れる。
お袖 まだ大旦那様がいらした頃ですよ。猫を真二つにお斬りになって、大目玉をお喰いになってさ――。
堀井 袖、つまらん事を言うな。(三人笑う)
三好 ハハ……ちょっと拝見。(堀井から抜身を受取って刀に見入る)
堀井 チョットしたもんだろ? 五六代前のじじいから伝わっていると言うから、なんしろ古いもんさ。
三好 ……。
堀井 (その辺を見まわして)なにはどうしたの、あの綺麗な娘さん?
お袖 登美さんは、まだ離れでおよってです。
堀井 寝てるか。大した度胸だね、近頃の若い娘なんてえものは。
三好 いいな……(刀に見入っている)
堀井 相当の家の人らしいじゃないか? 文学少女と言うのかね?
三好 なんですか?
堀井 離れの娘さんさ。
三好 登美君? いやあ、文学少女じゃ無いんでしょうね。
堀井 あれ、君とはどう言うんだい?
三好 どう言うとは?
堀井 とぼけなさんな。
三好 とんでも無え。ただの知りあい……女房が女学校につとめていた頃、一二年教えていたから――
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