。(その話に興味が無さそうに、刀身を見ながら言う)
堀井 そりゃ知ってる。君の奥さんが亡くなられる前もたしか泊りこみで看病していたのを見かけた事がある。奥さんをよっぽど好きだったんだね?
三好 そうです。死んだ奴が丈夫な頃も、よく泊りに来ていました。
堀井 (話がシンミリして来たのを、はぐらかすようにニヤニヤして)チト怪しいぜ。立候補でもしたんじゃないか? なくなった先生の御亭主の後釜と言うやつに?
三好 え? じょ、冗談言っちゃいけねえ! そんな事、登美君に聞かれたら、あなた、噛みつかれますよ。
堀井 ハハハ、ハハ、噛みつかれちゃ、かなわん。……だが、いずれにしても悪く無い、劇作家や小説家なんてえ商売も。あんなのがノコノコ、たよって来る。
三好 なに、行き先きが無いんでころげ込んで来ただけですよ。
お袖 ですけど、お家の方でも話がわからな過ぎるじゃありませんかねえ。登美さんの方で財産は要らないと言ってるんですから、その通りに運んでやればいいじゃありませんか。
堀井 財産は要らないと言うのか? へえ、もったい無え! 俺にくれんかなあ!(三人声を合せて笑う)だが、なんだね、そ言ったとこも
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