誰が知らなくっても、俺あそれで満足する。戯曲なぞ書けても書けなくてもいい。末の末だ[#「末の末だ」は底本では「未の末だ」]。
轟 (深くうなづきながら聞いていたが)そこまで、あんたは自分を掘り下げて来ている。僕あ、頭が下がる。
三好 とんでも無い。掘り下げだなんて、そんな事じゃ無いさ。こりゃ男としての恥だよ。恥をさらけ出しているんだ。恥も外聞も無くした、言わば破廉恥な態度だ。
轟 いや、そうなんだ。それでこそ、あなたなんだ。……しかしね。僕あ思うんだけど、あんた自身のそんな風な考えは考えとして、そのあんたを良く見たり悪く見たりする世間も有る。これは又これで客観的な立派な一つの事がらだと思うんだ。そしてそいつが、不当に間違っていれば、やっぱし怪しからんと思いますね。
三好 ところが、そいつが間違っていないんだな。いや僕の事に就いてだけじゃ無い。すべての事、仮りに作品に就いてだって、外部からの批評と言う奴は、その高さや低さはあるかも知れんが、実は全部当っているもんだよ。昔の人はうまい事を言った。「目明き千人、めくら千人」。
轟 だから、その、主にめくらの方の千人にぶっつかった奴は災難ですか
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