よりも、僕の作品の事が、目下のところ先決問題でしてね。
三好 だって、ああして発表してしまえば、一応その方は片附いたようなもんだから。
轟 そりゃそうだけど……そう大して人が読んでも呉れんだろうし――。
三好 そりゃ、まあ、あんな、始めたばかりの雑誌だからな。しかし、どうも僕が口を利いてあげられる雑誌は、あすこいらしか無いからね。
轟 いえ、そりゃ、僕なぞの作品を発表出来たのは、あなたのおかげだと思って、感謝しているんです。誤解して貰っちゃ困ります。発表した場面に不足を言ってるんじゃ[#「言ってるんじゃ」は底本では「言ってるんぢゃ」]無いんだ。僕なんぞが、そんな、そんな事言っちゃ罰が当る。
三好 いや……。だが、君のこないだの話では太田さん達の仲間あたりでは、だいぶ読んで呉れたって言うんだろ?
轟 あの一派は、あなたとの関係が有りますからねえ。でも、それにしてからが、あと、別に誰も何とも言ってくれんし、須堂さんなぞ今月の「世紀文学」に月評を書いてるんだけど、僕の作は黙殺しているんだ。あれだけ知ってるんだから、なんなら悪口でもいい、せめて一行でも書いて呉れたっていいと思うんだけど。
三好
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