轟 いつまで此処にいるんですか?
三好 家の方が多少片附けば戻るんだろう。僕あ早く戻って、なんか働きにでも出たらとすすめているが、……なかなか人の言う事なんぞ聞く女じゃ無いからね。
轟 それにしちゃ、しかし、あんたのめんどうなど、よく見てくれるじゃありませんか。知らないで見ると、ちょいとこう――。
三好 ハハハ、あれ位の年頃の女には、そ言った本能が一般に有るんじゃないかね。……それに女房が生きていた頃を知ってるしね、僕がこうして一人でウジをわかしているのを見ると、あわれになるんだろう。……ひどく気にするじゃないか?
轟 気にするってわけでも無いけど。……奥さん亡くなられてから、一年と――。
三好 間も無く、六ヶ月になる。
轟 あなたも大変だなあ。……なんしろ、あの悪戦苦闘の後だもんなあ……。(間)
三好 ……君んとこのお母さん、いっそ病院に入れたらどうだ? そんな風にグズグズしていると、取り返しの附かん事になるよ。
轟 だけど、なにしろ先立つ物が無くっちゃ――。
三好 それは、しかし、此処の先生の診療所に話せば、なんとかなる。
轟 ありがとう。いずれ、お願いするかも知れんけど……それ
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