毒気を抜かれたようにユックリ歩いて、紫檀の机の傍に坐りながら)……あんたの奥さんですか?
三好 いやあ。
韮山 すると言うと――?
三好 友人ですよ。
韮山 ふーん。……(左手の人差指で自分の頭の上でクルクル輪を描いて見せて)少し、この、来てるんじゃないかな?
三好 ……(ニヤニヤして)そうですね。
韮山 気の毒に、あんなベッピンさんを。
三好 ハハ。……煙草いかがです?
韮山 ありがとう。……(急に又、緊張した顔になり)ホントに、博士の居所を教えて下さいよ。な! 頼む!
三好 僕も知らないんです。
韮山 そんな筈は無からう。此処にだって、たまにはやって来るのでしょうが?
三好 来ます。しかし……。
韮山 それであんたが知らんと言う法は無い! そんなシラを切っても、通らせん!
三好 でも知らないんだ。(煙草入れから煙草を取る。すると、やがてオルゴールが鳴り出す)
韮山 チェッ! (再びイライラして、いたけだかな声を出す)アホ言うたら、いかん! そんな、そんな、あんたらが、腹を合わせて、私を妨害するならば、私にも覚悟があるぞ!
三好 訴えるんですか?
韮山 いや、博士の居所がわかるまで、
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