りませんかね? だけど、先生とは永年のおなじみだから、まさか、こうなっても、それほど冷たい事も出来ないと思うて、わては、これでも、我慢に我慢をしぬいて来ている。先生に会おうと思って足を棒のようにして彼方此方お百度を踏みはじめてからだって、もう一月の余にもなります。そこんとこはあんたも諒解して貰いたいな。
三好 そりゃ、わかっています。
韮山 でしょう? それなんだ。第一、私は、先生が誠意さえ示して下さりゃ、元金《もときん》だけで、利子の分はスッカリ棒を引いてもいいと言う腹さえ持っている。
三好 この前も伺いました。……だけど、今の先生には千円一万円も同じことじゃないかな。
韮山 だ、だからさ、だからわては言うんだ。問題は誠意ですよ! 誠意の問題だす。先生が誠意さえ見せて下さりゃ、なにも好んで事を荒立てたいとは思うていません!
三好 そうですかねえ。だけど無いものは無いんだから……いっそ、どうです、その刑事々件にしちゃったら!
韮山 そ、そんな、あんた。あんたは心易く言うが、そいでは、そうしてもよろしか?
三好 ほかに仕方が無ければ……。
韮山 だから問題は誠意の問題だと言うとるんや、私
前へ
次へ
全109ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング