を銀行へ二番に入れると言うのは、聞こえないと思うんだ。憎いですよ。私が腹に据えかねているのは、そこだ。そうじゃありませんかね?
三好 だけど、銀行の方は、あなたの方よりもズット以前の抵当じゃなかったんですか?
韮山 そりゃ、私の方の証書の書き代え以前の話だから、書式にすれば銀行の方が先口かも知れません。しかし、その前から私の方じゃ証書一枚で随分御用立てしてあったんだから、義理人情を多少でも知っていたら、みすみす銀行に持って行くと言う法は無いのだす。
三好 韮山さんが義理人情のことをおっしゃると、少し妙ですね。
韮山 (怒り出す)そうでしょう? そうなんだ! あんた方あ、その腹だ。高利貸しが義理の人情のと言うと、あんたらの眼で見りゃ、狸が衣冠束帯で出て来たように見えるのかいな! ふん! その狸にだ、生きるの死ぬのと言って泣き付いて貸して貰ったなあ誰かね? 笑わしちゃいけませんぜ。いいかね? 義理も人情も問題にしないで私が開き直ればだ、いやさ、仮りに私がその気になって荒立てて来れば、この二番抵当のことは、刑事々件にだってなせる事じゃ。
三好 刑事々件ですか?
韮山 詐欺取財だす。そうじゃあ
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