て下さい。二三日前僕が修繕したばかりだ。
韮山 (相手の言葉を無視して)本所の病院の方に私は行って来たんですよ。いらっしゃらん。院長ともあろうものが、そうそう病院に出て来ないと言うのもおかしな話じゃが、いくら捜しても居やはらんしな。だから此処だ。
三好 此処には今、僕が居るきりです。まあ、お坐り下すったら、どうです。(そう言う自分も立ったままである)
韮山 (ニヤニヤ笑いながら、花林の卓の前に坐る)たしか、なんとか言いましたね?
三好 三好です。(これも坐る)
韮山 堀井博士とは、どう言う御関係でした?
三好 亡くなった家の者が先生に診て貰っていました。僕も厄介になって来ましたが、まあ、友達……と言うのも当らんかも知れんが、先輩の友人と言うとこですね。どうしてなんです?
韮山 こうしてゴタゴタしている家屋の留守番をなさっている位だから、勿論私に対する博士の債務のことも御存じだすな?
三好 くわしい事は知りませんが、でもまあ、いくらか――。
韮山 そう落着いていられちゃ、困りますねえ。とにかくね、よござんすか、此の前も言ったように、私の方のことを何とも片附けないで、ことわり無しに此の家屋
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