してしまう。堀井も三好も笑い出す)馬鹿ね!
(その笑声に混って奥でベルが鳴り出す。三人ヒョイとそれに気が附いて、次々に笑い止んで耳を澄ます)
堀井 ……野郎、来やがった。(少しキョトキョトする)
お袖 どうしましょう? そうでしょうか?
三好 ……裏木戸から行って下さい。
堀井 袖、靴だ靴だ!(お袖、足音を立てないように走って上手奥へ去る)三好君、頼むよ。(縁側に出る)
三好 大丈夫ですよ。……(下手奥の玄関の方に聞き耳を立てている。その方で誰かが何か言っている声が微かにする)僕あ、玄関で喰いとめていますからね……(行きかける。そこへお袖が堀井の靴と自分の下駄を抱えて小走りに戻って来て、少しウロウロする)
堀井 (押し殺した声で)袖、早くしろ!(お袖、下駄を庭におろして穿き、堀井の靴を並べる)三好君、じゃこれで。
三好 じゃ――。
堀井 おっと――(靴を穿きにかかるが、あわてているので、うまく穿けない)くそ、外で穿け!(いきなり靴を手に持って、足袋はだしで庭に出て、お袖を先に、ユスラ梅の所を廻って上手の方へスタスタ行きかけ、フト靴と刀をかかえ込んだ自分の姿を振り返って見て、不意におかし
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