だ少しは痛いけど。
堀井 どれ、チョット見せたまい。(寄って来る)
三好 いいですよ、いいですよ。(尻ごみをする)いいですよ。そんな、今頃――
堀井 だって、これが見納めになるかも知れんぜ。そんな事言わないで見せろよ。どれどれ。
三好 (逃げまわりながら)なあんだ、いいですったら! 僕のケツがどうだってんだ。馬鹿にしなさんな。
(お袖泣いていた涙を拭きながら、笑い出す)
堀井 ハッハハ、まあ、そいじゃ、悪くなったら診療所に言っとくから、後藤君に診て貰うんだな。(刀を持って立つ。その辺を見まわしながら)見納めと言やあ、此処も見納めかな。いやさ、よしんば僕が無事でいても、どっちみち、とうに他人の物だ。……なんしろ、古い家さ。
三好 ……(坐り直して、畳に両手を突いて頭を下げる)先生、いろいろ言いたい事も有りますけど――どうかシッカリやって来て下すって――。
堀井 (立ったまま、これも頭を下げて)……ありがとう。君もどうか。……後の事よろしく頼む。
お袖 じゃ私も、そこいらまで――(立つ)
堀井 いいよ、いいよ、見送られるてえガラじゃ無い。
お袖 でも、なんですから――チョット行く所もありま
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