を持たぬヘロヘロの善意なんてもの、何の役にも立たん。物事をこぐらからせるだけだ。業《ごう》を引きのばすだけだもんなあ。おふくろに言わせるとさ。業だ。言って見りゃ対症療法だね。必要なのはオペラチオンだ。
三好 ……だけど、先生が、今迄なすって来た事をそんな風にばかり考えていらっしゃるんだったら、僕あ反対だな。
堀井 だって、そうだもの。(何か言おうとして口をモガモガさせている相手に)まあ、いいよ。とにかくセンチかも知れんが、そんな気がするから、僕あ行く。
三好 …………わかります。
堀井 ひょっとすると、もう会えんかも知れんね。
三好 来月の五日でしたか?
堀井 (うなずいて[#「うなずいて」は底本では「うなづいて」]見せてから、ニヤニヤして)だいぶまだ間は有るけど、なんしろ、これだ。君も、いよいよ此処に居れなくなると困るだろうが――。
三好 困りゃ[#「困りゃ」は底本では「困りや」]しません。なんにも持ってない人間から、誰が何を取り上げる事が出来ます? 先生こそ身体に気を附けて、どうか――。
堀井 ありがとう。……そうそう身体と言やあ、痔の方はその後どうだい?
三好 大した事あ無い、ま
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