うな気がする。まだ、これで、政治や経済の組織に一切合切をかづけて、それで以て割切っていれば、どうなるならんは別問題として、落着いてだけは居れるだろうがね。君なんか、そうだろう?
三好 違いますね。
堀井 だって君あ、以前マルキシズムをやってた事があるんだろ?
三好 少しかじっただけで、なんにもわかっちゃいないんですよ。
堀井 そうかねえ。
三好 わからん。……ぶっつかって見る以外に手は無いんだ。とにかく。正《しょう》の物にぶっつかって、アッと思ったトタンに、自分がどんな音《ね》をあげるかです。丁と出るか半と出るか、そいつが掛け値なしの自分です。よしんば醜態をさらしても、もうこれ、致し方なし。……近頃、すべてそれでやっているんですよ。
堀井 ハハハ、丁と出たか。……いや、君の言う通りかも知れん。正の物にぶっつかるか、……それさ、結局僕がこんだ行くのもそれだね。戦争に掛け値は無い。これでよしと思った瞬間に敵弾に当って死んでもよしね。……帰って来れたとしても、もしかすると、そん時は僕はもう医者では無くなっているかも知れんな。少くともこれまでの様な人道主義者では無くなっていたいよ。力と言うもの
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