ビの「りょうしうざん」はママ]にいましき、と言う奴だ。……そら、お袖さんが鞍馬山をやり出した。(なるほど、上手奥で鞍馬山の最初の部分の大薩摩が、殆んど三味線の糸が切れんばかりの烈しさで鳴り出している)……(三好、無意識に左手で顔の涙をブルンと拭いて、気が附くと、レース編みの編み棒をまだ握っている。びっくりして見ていたが、それを握りしめて、自分の左の太腿の上からグッと突き立てる)ツ!
登美 何するのよう、馬鹿!(また泣き出す)
三好 ……(その編棒をポイと植込みの方に投げ捨ててスタスタ縁側の方へ行く)……痛え、やっぱし。……登美、君は、あっちへ行ってて呉れ。
登美 どうするの?
三好 チョット、書きたいんだ。(足の塵をはたいてから上へあがる)これを書く。
登美 これ?
三好 これさ。……日々、好日。日々、これ、好日だ。……なんでもいいから、あっちへ行け。邪魔だ。(机の前にキチンと坐る)
登美 三好さんの馬鹿野郎!(言い放って縁側を廻ってドンドン上手へ立去って行く)
三好 ……(机の上の原稿を見詰めながら、無意識に左手が煙草入れの方へ行く。しかし、その手が中途で止り、しばらくジッとしていた
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