のです。状況いかんに関せずわれわれは、われわれの気持として――
大野 そりや薄田中佐殿もわかっていられるよ。いいじゃないか、まあ、坐りたまい。
三芳 はあ。しかし、あんまり、なさけないことを言われるもんですから。(グッタリ椅子にかける)
大野 ハハ、これで薄田さんは、君たちのためには、司令部あたりでも大いにはからってやって下すってるんだぜ。それを忘れちゃいかん。
三芳 それは、わかっているんですが――しかしそれだけにです、そんな方から、こんなふうにみられていると思いますと、実に――。いえ、それも、もともと自分たち自身のせいなんですから、いまさら誰をうらむということもありませんが、ただ、なさけなくって。われわれがこんなふうに完全に生まれ変って、日本人として天地に恥じない心持でなにしようとしているのを、わかって貰えないかと思うと、じつに、涙が出ます。
薄田 まあいいさ、わかっとる、わかっとる。ハハハ、まあ君も一杯やれ。(ビールびんを取る)
三芳 ど、どうも。(恐縮しながら、コップをあげ、頭をさげる)は、いただきます。
薄田 すべて、この度胸だ。君も活動屋なら活動屋らしくだな、もう少し腹のす
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