いいだろう。ねえ薄田さん。(薄田のコップにビールをつぐ)
薄田 そう。わしらの方として別に異存はないが――しかしまあ、そこまでなにしなくても、いいんじゃないかねえ。こないだ、隊の方で新聞や雑誌の連中を引っぱったのは、チョットほかのことでなあ、君たちとは別だ。それほど気にしなくともよかろう。それに、いま言ったその、理解さえしていただければというんだったら、なにもそう――
三芳 いえ、そ、そ、それは、そ、そんな意味ではないのです! これでもし許していただければ、一兵卒として従軍します、する気がなくて、誰がこんな願書を出したり――ちがいます、そ、そんな新聞や雑誌の連中が引っぱられたから、それにおびえて、それで、ゴマをすって私たちがこんなことを――心にもないことをしていると――そんな、そんなふうに取られては、立つ瀬がありません。し、し、心外です、そ、そんな――
薄田 ハハ、まあいいよ。
三芳 よくありません。そんなふうに私どもの誠意が――
薄田 誠意はわかっとる。だが君たちまで第一線に引っぱり出さなきゃならんほど、まだ、わが方の状況はなっとらん。安心したまい、ハッハ。
三芳 そのことではない
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