猿の図
三好十郎
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大野卯平邸の豪華な応接室。壁によせかけ多量の荷造りした疎開荷物。フランス窓をこちらに一段さがるとテラス、テラスの下が防空壕になっている。人が三四人しゃがんでおれるくらいの広さの壕の内部が、こちらから見える。
背広姿の大野卯平と第一装の軍装の薄田が、室の中央の円卓に向い合ってソファにかけ黙々としてブランディを飲んでいる。その二人に並んでもう一つのソファのまんなかに、小さく、ゴーゼンと坐りこんでいるくめ八。
それに向って両足をそろえてキチンと立った三芳重造が、原稿用紙に書いた文章を読みあげている。ゲートルまで巻いた防空服装。
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三芳 (しんけんな語調で)……『かくのごとくなって来た状勢の中で、私どもは、かつて私どもの犯していた罪悪が、いかに兇暴なものであったかということを、今さらながら、いな! 今までのどのような場合よりも百千倍も強く、身にヒシヒシと痛感するも
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