のであります! それを思うと、泣いても泣ききれず、くやんでもくやみたりません。……なるほど、私どもの思想上の転向は――すくなくとも私の転向は、心底からの日本人としての真の自覚――自分の内における日本人の発見、発掘ということから出発したものであります。つまり、ホントの開眼でありました。どのような意味ででも外部の力に依って強制されたものではありませんでした。つまりわれわれの内に流れているスダマにもよおし立てられて、ふるさとに帰るがごとく転向した者であります。正確にいえば、それは転向ではなくて、誕生であり、眼ざめであります。でありますから、自分自らにおいて私どもは一人一人みな、そのことに満足しています。それにまた――このようなことを申しますと、御列席の検察当局や司法当局の方々に対して或いは御不快を与えるかもしれませんが、しかし私はあえて正直に申してしまいます――つまり私どもは、国家の法律の前に公然と裁かれ終ったものであります。もちろん、当局の御好意に依ってわれわれに下された裁断はわれわれの罪に相応したものではありませんでした。そのことに対する私どもの感謝の念は限り無いものでありますが、それが
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