限りないものであればあるだけ、それを此処で言葉の上だけで述べるような軽薄さをしたくありません。とにかく、私どもは、法律によって裁かれ、かつ、自分自身の内的必然的な課題として転向したものであります。その点、私どもは誰に向っても既に恥じるべきなんらの理由を持っておりません。……しかるに、われわれは今や、それ位の気持でもって、かつての自分たちの思想及び行動を振りかえってみることができなくなったのであります。われわれの犯した罪は、単に法律やそれから自己一片の良心に依って裁かれ許されれば足りるといったような種類の罪ではなかった! それを、身をもってわれわれが知ったということであります! そしてそれを知ったのは、このたび催していただいた伊勢神宮における錬成会においてであります。……もちろん、私どもは――』
大野 (薄田のコップにブランディをついでやりながら三芳の朗読にとんちゃくなく、それをたち切って)文化方面の転向者を百人ばかり、こないだ伊勢へつれて行って、鍛えたんですよ。これで三度目ですがね、フフ、水へ叩き込むと、みんな泣きましてな。
薄田 (ブランディをのみながら)うむ。
三芳 ……(朗読を中
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