表情)――どうぞ君、やって下さい。(これはウイスキイを相手にすすめるのである)
大野 どうぞ、どうぞ、あなた、どうぞ! (これはカメラマンに向ってすすめる)
久子 どうぞ、ごえんりょなく[#「ごえんりょなく」は底本では「ごえんりよなく」]! いいじゃありませんの!(ほとんど絶頂に達した彼女の幸福が紅を塗った顔を紅以上に上気させている。椅子の上からトンコを抱きあげ、その顔を撫でながら、三芳と記者たちを見くらべつつ立っている)
記者 ……どうも!(ウイスキイを三杯ばかり、あざやかに飲みほして)ハハ! けっこうです! こっちのねらいも、その野武士というところですからね、先生には失礼ですが。実際この、映画界もですね、いつまでも大資本による独占的な営利主義いってんばりでは、しかたがないですからねえ。(原稿紙と鉛筆をかまえる)
三芳 どうもねえ、しかし、僕なぞが君……(頸をかいたりする謙遜な態度が、実に自然な好感をにじみ出させる。その姿に向ってカメラマンはすでにカメラを向けている)
記者 どうか、きらくにお話し下さい。どうぞ!(鉛筆をなめる)
三芳 弱ったねえ!
大野 弱ることはないじゃありません
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