れたからねえ――三つ指をついてさ、全くの日本趣味の――忘れもしません、三芳君が二度目に、この、引っぱられた時に、あんたが真青な顔をして私んところに駆けこんで来られた時さ――
三芳 おい、津村君の方は、いいのか?
久子 ……(言われて扉の方を見る。その扉口からツヤ子がスタスタ入って来る。手に編物の道具を持ち、腰に米の袋をさげている。入って来て一同を見るが、黙って隅の椅子にかける)……ツヤちゃん、あの津村さんごはん、食べてる?
ツヤ そでしょう……(編物をはじめる)
三芳 おきゅうじくらい、してくれたら、どうだい?
ツヤ ……(相手にしない)
久子 チ。(舌打ちをしてから、わざとツヤ子を無視して)ねえ、大野さん、どっかに私のスーツになるような布地はないかしら? そうね、ツウィードかなんか?
大野 そうですねえ、私の方は、布地など、チョット方面ちがいでねえ。しかしその方も知ってる奴に聞いてあげましょう、たいがいあります。しかし、高いよ。
久子 そりゃ今どきですもの、しかたがないわ。
大野 でもあんたなど、ツウィードのスーツなぞ着たりしていいのかねえ? たしか、この辺の、そっちの方の文化会とか
前へ 次へ
全65ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング