々で、くめ八も一種の神経衰弱になっていたんだなあ。
久子 その後、どうなすって、くめ八?
大野 かわいそうだったが、進駐軍関係の人に、売ってしまいましたよ。家は焼かれる、失業はする、この年になってウロウロしている人間が、犬を連れてもいられませんからね、ハハハ! いやあ、もういけません、こう世の中がデタラメになってしまっちゃね、追放々々で、われわれの仲間などミジメなもんでさあ、もとの地方の所長で靴なおし屋になった男がいますよ。そりゃね、言い立てて見りゃ、われわれにだってそれぞれ言い分はありますがね、敗軍の将――いや将でもないが、とにかく、兵を語らずだ、ヒヒ! そんなことよりも、とにかく食いつなぐことの方が焦眉の急を告げているというわけ。
久子 ホントに、なにもかも変りましたわねえ。
大野 変りました。いや、実は、変った中でも奥さんの変られたにはチョット、びっくりした。さっき、そこから出てこられたときには、別の人かと思った、ヘヘ! 
久子 そう言えばいつも、かけちがって、終戦後はじめてお目にかかったんですね。
大野 以前は、いつも着物を着て、マゲなどにゆって――いや、あれもよく似合っていら
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