せんか、ツヤ子さんがどうしてもお米を出そうとしないんだもの。ホントにイケズウズウしいったら。
大野 (手を出して、久子の抱いているトンコの頭を愛撫しながら)ハハ、いやツヤ君なら、それくらいなことはヘイチャラでしょう。内に来ていた頃ねえ、どうもこいつは頭が少し狂っているんじゃないかと思うことが時々あった。(三芳に)ほら、私んとこにきていた薄田中佐ねえ、あいつと、あいつの副官を、いつだったかスリコギでぶんなぐったことがあるんだ。いや、どうもようすが、二人であの子にそのチョッカイを出したというようなことだったらしいけどね、ハッハハ!
久子 あれでチョットしぶかわがむけていますからね、ヒ! それにおまけに、ちかごろ、ばかに色気づいてきて、いやらしいったら、ないわ。いいかげん、あんな子を引受けてるの、ことわってしまいなさいと、しじゅう言っているんですよ。
三芳 だってそんなわけにゃ行かんじゃないか、叔母さんの手前――(ウィスキィをカプカプ飲む)
大野 そうそう色気で思い出したが、こいつ(とトンコの頭を撫で)も、おしいことをしましたねえ。あん時ぁ、たしかにかかったと思ったけどねえ。あの当時、空襲々
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