ね――とにかくそんな人間が、いまさら、こんなことを言うと、あんたがたには、一応も二応もヘンに聞こえるだろうと思うが、しかし、たとえどんなにヘンに聞こえようとだねえ、この際正直に思うことを言ってしまいたいのです。つまり、あの当時、多少でもだなあ、軍閥や財閥の下っぱの所に足を突込んでいただけに、それだけに、私には尚更、やつらの罪悪が、身にしみてわかるんです。だまされていた! だまされていた! それがどの程度まで、どんなふうに、だまされていたか、どんなに悪どいファシズムの権諜によるギマンであったか、とても、とても、あんた方にはわからん!
三芳 (黙々としてウィスキィばかり飲んでいる津村に、大野の方をアゴでさして)この人は、古い司法官吏でね、戦争中、軍部や情報局や保護監察所に関係していた人だ。
津村 ふーん。
大野 なんだったら、私は、この私の身をもって知ってきた軍閥と財閥の罪悪史を――その具体的事実をだな、あんたがたに提供してもよろしい。機会を与えてくださればだな、あんたがたのほうの集会に行って話してもいい。たとえばです、たとえば、この、かりに戦争中の古いことは問わないとしてもだ、終戦当時だ
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