あとで言わ。
森山 おらだちに遠慮はいらねえよ。
次郎 ううん、あとでええです。
りき まあ、よからず、ユツクリあすんで行け。……
[#ここから2字下げ]
(森山と、だまりこくつている喜十に)
するつうと、なにかね、芹沢の金五郎は、どうしても折れようとはしねえつうんだね?
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
森山 へい、だめでやすね、まあ。さつきから申した通り、これが昨日や今日の事で無え。さしあたりはおとどしの総選挙の時に海の口の須山さんが買収問題であぶなくなつた。あん時の、そいつを警察に言いつけたのが村で三四人いたらしい、その一人がこの喜十さんだと須山の方で睨んだらしいだね。そんでまあ、芹沢じや、昔つから、須山さんの子分みてえにしてるから、須山からそう言われて喜十さんちをイビリにかゝつたと言うわけだ。もつと前にさかのぼれば、戦争中、喜十さんちで須山さんから、借りて作つていたタンボを須山で取り返しにかかつて、喜十さんちでは、そうなれば立ち行かねえから甲州へ国越えをするだの、娘売りこかして稼がせるのと騒いだ事がありやんしよう。たしか、ばさまが、わざわざ
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