口きいてくだすつて、須山ではタンボ取上げるの思いとゞまつて、丸くおさまつた。やしたね?
りき そんな事が、あつたかなあ。
森山 ありやした。そん時、その喜十さんとこから取り返したタンボを、実は芹沢で直ぐ借りて小作する話になつていたんだなあ。だども、ばさまに乗り出されては須山さんも不承しねえわけに行かなかつた。さあ、芹沢じや当てがはずれて、喜十さんとこ、目の敵にしだした。それ以来、事ごとにイザコザで、積り積つて来たやつだ。根が深いんでやす。そこへ、こんだ分譲地の水口の問題で、とうどう爆発しちやつた。わしらとしても見すごしちやおれなくなりやしてね。いえさ、これが金五郎と、喜十さんち、つまり隣り同士の争いだけなら、村にやよくあることで、どんなに両方でシノギを削ろうと、はたで何か言うべきこつちや無えかもしれません。だけど芹沢の方じや近所の家を抱きこんで、喜十さんとこを村八分にしろだなんて、寄合いを開いたりして、事実上、村では喜十さんとことは誰一人附き合わなくなりやした。こうなると、村全体の問題でやすからね。わしらもいろいろ口きいて見たが、芹沢じや、なんとしてもウンと言わねえ、ホトホト手を焼きや
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