した。村会でも問題になつたが、芹沢の方は金もあるし勢力もある。第一須山さんが附いてるんで、みんな遠慮して引つこんでいやす。そんでまあ、ひとつ、ばさまに相談して見ずと思いやして、わしもへえ、出しやばるわけでは無えが指導員なんぞしてればこんな事心配でやすからね、こうしてまあ、喜十さんといつしよに……おせんさんのおかみさんが、ちようど味噌うとどけに行くと言うんで、つれなつて来ていただきやしたようなわけで――
せん その話は、おらも聞きやした。海の口の事が川上まで伝わつてくる程じやから、よつぽどのなんでやすねえ、喜十さんも大変だなし。
喜十 ……へい。
森山 このシが又、この調子で言うべき事も言つてくれねえので、なおのこと事が行きづまるんでやす。どうして、こう口をきかねえんだか、ことに腹あ立てたとなると、まるでへえ、石つころになつちまうだから。なあ、喜十さんよ?
喜十 へい。
森山 へい、か。どうも、へえ――
りき はは、なあに、おらが口きかせて見べえ、やい喜十!
喜十 へい。
りき お前、そんで、金五郎が憎いか?
喜十 憎くは無え。憎くは無えが――(と、老農夫に間々ある黙狂と言つたふうの、タ
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