こんな山奥の一軒屋だかんなあ、人が来ると、うれしくてなあ。(家の土間に入る)
せん (あがりはなから)え、あんだえ? あれま、甲州の新一ちやんと中込の次郎ちやんでねえかよ!
新一 伯母さん、今日は。
次郎 いいあんばいです。
せん さあさ、あがりなんし。(おりきに)ばさま、今日は大入満員だ。孫が三人そろいやした。
りき よう来た。甲州でも中込でも、みんな変りねえか?
新一 うん。おつかあが、ばさまに分けてもらつて、開こんに植えたダンシヤクよく出来たから礼言つといてくれと。
りき そうか、そら、よかつた。
新一 これ、お茶だ、ばさまと約束してあつた。月給もらつたから直ぐ買つて持つて来た。
りき そら、ありがてえ。ちようど四五日前から切れちやつてなあ。茶あ飲めねえと、なさけなくてなあ。ほう、月給で買つて来たかや?
森山 新一さんとも久しぶりだ。はは、おぼえていやすかい、おかいこの指導で一二度甲州へ行つた森山でやすよ。
新一 おぼえていやす。今日は。
りき 次郎も突つ立てねえで、こゝさ坐れ。
次郎 うん。……これ、おつかあが。
りき あんだ?
次郎 餅だ。この秋出来の餅米を、ばさまにお初穂に
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