なあ、板橋のお兼婆あが、腸が悪くて悪くて、どんな養生しても、町のお医者に三人も四人もかゝつて薬浴びるほど飲んでも治らねえ。しまいに拜み屋さまに凝つても、まだいけねえ、ガンだガンだつうので泣いてたつけ。俺あ見舞いに行つてよ、よく/\気いつけて見ていたらば、お兼婆あ、アズキがじようぶ好きでな、なんかと言つちや、アンコにしたりオヤキにつけたり、カユにたきこんだりして朝晩に食つてら。アズキというもんは通じのつくもんでな、婆あそれ知つてるくせに、好きだもんで、いろんな理屈つけちや、かかさず食つてら。そんで俺が、いきなりアズキを取り上げた。つれえといつて、初めは婆あめ、わめきやがつた。そやつて半月たつたら、腸の悪いの、なめて取つたように治つちやつた。はは。……かんじんのてめえの命がおしかつたら、いけねえもなあ、きれいサツパリやめる事だ。
次郎 ……するつうと、ばさまは、よその軍隊が攻めこんで来ても抵抗しねえのか?
りき 抵抗たあ、なんだ?
次郎 刃むかわねえかというんだ?
りき さあなあ。そら、人間だから、わからねえ、そん時になつて見ねば、うぬが目の前で同じ日本人がドンドン殺されたりすれば、おおき
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