しねえけどさ、もし来たら、手をあげて取らすんか?
りき そつたら事、俺あ知らねえ。それにこいつは日本国全体のことだ。俺なんずのクソ婆あが、アレコレ言つたとてなんになる? もつと賢い衆が、うまくやつてほしいや。だども兵隊は、もう、こさえちやならねえ。……こねえだの戦争で、俺あ息子を四人兵隊に出して二人とられた。……悔んじやいねえ俺あ、それを。あたりめえずら、それぐれえ。……んだが、息子二人とられて見ろ、楽じや無え。……その俺が言うんだ。言つてもよからず?……兵隊はもう、どんな兵隊も、こさえちや、ならねえ。
次郎 ……だども――
りき だどももヘチマも無え。理屈をつけりや、どんな事にも理屈はつかあ。軍備した方がええという考えにも、しねえ方がええという考にも、それぞれ理屈はあるべし。両方に良い事も有りや悪い事もあらあ。それをハカリにかけて較べていたんではきりが無え。大事なこたあ、これが一番だと思つたら――これが一番ホントだと見きわめ附いたら、ほかのグジヤ/\した事、一切合切、スペツとかなぐり捨てゝ、そいつをやる事だ。そんために出来てくる困つた事あ、又なんとかすればなんとかしようがあらあ。去年
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