早い方がええ。
サダ あい、わらじ。たびは、え?
りき たびは、いらん。(わらじの紐をしごきながら)そうだ、次郎の相談だつたなあ。東京さ出るんだと?
次郎 うん。
新一 出るだけならいいさ。けど次郎は予備隊へ入るんだなんて言うから、俺あ反対してんだ。予備隊というのは今後軍隊みてえになるらしいんだ。
りき ほうか、軍隊か? (わらじをはきながら)
次郎 それでも俺あいいんだ。新ちやんは軍備に反対だからそう言うが、俺あ反対じや無えからな、国を守るために必要なら、俺あ喜こんで兵隊になりたいんだからな。
りき そうか。……なんやら、そんな理屈は俺にやわからねえが、次郎は、すると、どうしても東京さ出てえのか?
次郎 うん、出てえ。
りき そうか。そんなら、出ろ。若い時あ二度無え。人間、自分がホントにしたいと思う事するのが一番だ。はたの人間が何を言おうと、うぬがようく、うぬの胸に手を当てて考えて、何でもええから一番してえと思うことを、いつしよけんめいやつて見ることだ。すれば、たとえしくじつたつて悔むこたあ無え。東京さ行け。そいで、うまく行かなかつたら又もどつて来い。
次郎 ……うん。いや、そうだね
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