えよ。ホントは俺、東京なんどへ出たくは無え。俺あ、へえ百姓が一番向いてるし、百姓やつていてえんだ。けど、家さ居ても、家の田地はそうでなくても足りねえのに、次男の俺がいると分家なんつ事になると家は立ち行かねえし、兄《にい》ちやんも可愛そうで、ちかごろ俺、兄ちやんの顔見てるの、たまらねえんだ。
りき ……なんだ、そうかよ。……そんだら、東京なんどへ出るの、やめろ。なあんだ、そうか――そんなら、やめろ/\。田地の足りねえのは困りもんだが、なに、俺がチヤンとええようにしてやらず。親戚中から少しずつ譲つてもらつても二段やそこらは集まるべし。じさまとおらが死んだら、この下のタンボの一枚ぐれえ、てめえにくれてやらあ。
次郎 ……ありがとう、ばさま。
りき なあによ泣きさらす? 娘つこじやあるめえし、メソメソするの俺あ大きれえだ。
森山 (これも足ごしらえをしながら)だけんど、なんでやすねえ、現在この、農家の次男三男の問題は、こいで大きい問題でやすよ。結局は土地が足りねえからね、いくら農地改革やつてもホントの解決にはならねえ。人口問題をなんとかするとしても急の間には合わねえとなると、こいつ、国内だけで
前へ
次へ
全34ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング