にをしゃがるんだ!(叫ぶと同時に、鉄柵の間から突出して彼の服をつかもうとする男1の右手をペシッ! と叩き払い、次ぎに柵の間からスッと入れたゲンコツで、男2の顔の正面をガンと突きなぐって置いて身をひるがえすや、ダダダと走って廊下奥に消え去る)
男1 (叫ぶ)ど、ど、どうしてくれるんだ、僕たちを! こんな所で、こんな――!
男2 (叫ぶ)助けてくれッ!
男3 ヒ!(笑おうとするが、顔がこわばって笑いにならぬ)
男4 フ! ……(左手ばかりをピキピキさせている)
友吉 ……(壁に顔を押しあてて、ジッとしている)
[#ここから3字下げ]
(ダダーンと、かなり遠い所で投弾の地響き。しばらくして第二弾、第三弾、それが次第に近づいて来るのがハッキリわかる。男2がギヤアと叫んで、猿のように正面の鉄柵の、かなり上部に飛びついて歯をむく。あとの四人は、恐怖で凍りついて、そのままの姿で動かぬ。……ダダーンと、さらに近い第四弾。その地響きで、友吉が廊下の隅に置いたカラのバケツが、カランといって横にころがる。チョット、シーンとしてから、ダダダダと、ごく近くにあるらしい高射機関銃の発射される噛みつくような音がして
前へ 次へ
全180ページ中98ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング