地で講演もして来た考えでありまして、冷静な科学的検討をへて来た思想であると同時に、今日となりましてはわれわれの信念となっているところのものであります。もしマルキストとしてわれわれを処分されるのでありましたら、われわれは、あえて辞するものではありませんが、しかし、この、現にわれわれが到達している理念の体系をよく理解された上で、いずれとも処断していただきたいのです。われわれは、これを、神の前で誓って断言すると共に、この聖戦はじまって以来、各方面の戦場で陣歿された将兵のミタマの前で明言します。実は、私の弟も昨年、上海附近で戦死しておりまして、それを思うと私、なんであります、まだ、この、女の味も知らない二十四になる賢介がです、この、童貞のままで――クリークの泥の中に頭を突込んで死んでいたそうですが――まったく、シッチャイネーヨと――(直立不動のまま、まくし立てる)
伴 ……(冷然として聞いていたが)もういい。おい。(下士に、浮田を別室へつれて行けとアゴをしゃくる[#「しゃくる」は底本では「しやくる」])
下士 は。……(浮田に)お前は、あっちだ。
浮田 戦陣訓、戦陣訓と、そりゃ、ウヌは殺される
前へ
次へ
全180ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング