あれがきこえると、なお暑いような気がしゃあがる。お祈りをしているのかね?
男3 便所のそうじだ。
男4 ……頭ん中がスーッとする。……サンビ歌というものは、いいもんだね。
男2 わしにも便所そうじをやらしてくれんかなあ。ここに居るよりやマシだ。
男3 へっ、一日や二日じゃねえぞ、おおかた、もう一年になるんだぞ。三百六十五日だ。日に二度ずつなめて取ったようにキレイにするんだ。やれるもんなら、やって見ろい。
男4 へえ、すると、エスさまあ、ここへ来てから一年にもなるのかね?
男3 そうよ。……俺あせんに居た奴から聞いた。ヘヘ……なんしろ、今じゃ、ああして此処で別あつかいの、飼いごろしみてえになっているけど、はじめは、ずいぶんヤキを入れられたそうだ。左の腕も、それだ。なんしろ、憲兵隊でもやられたそうだからなあ。向うは荒いや。イキがとまった事が三度も四度もあるってんだからなあ。そんでも、ネをあげなかったそうだ。
男2 大将の父親が、あの大将のことを苦にして――世間に相済まねえというんで、とうとう、首をくくってしまったんだってねえ?
男3 お前どうしてそれを知ってる?
男2 こないだ調室で小耳
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