んを、あなたさまのミモトに導いた兄に罪がございますでしょうか? 兄は善い人です。兄は悩んでいます。兄は、自分で自分を疑いはじめています。そして、あなたさまを疑いかけています。兄は、かわいそうです。……早く早く此処へ来て下さい。そして、私は此処にいる、安心するがよい、苦しみを耐えしのべといって下さいまし。そうしたら、兄は安心して、どんな苦しみにも耐えて、あなたさまの栄光と、さばきの日を信ずることができるでしょう。兄は何一つ、むくわれる事を望んでいるのではありません。ただ、栄光とサバキを信じながら――あなたさまに、すべてをおまかせして、そのためにはどのような苦しみにも耐えようとしています。ただ、あなたさまを信じないでは、兄は一刻も耐えて居られません。兄の苦しみは、それほどまでにひどいのです。どうぞ、どうぞ、神さま、あなたさまを信じさせて下さいませ。一刻も早く、あなたのいらっしゃる所から……此処へ降りておいで下さいまし。そして、友吉さんや兄に、よしよし私は此処にこうしている、此処にこうしてお前達を見ていてあげる、とおっしゃって下さいまし。神さま、私たちを――
人見 治子……おい、治子。
治子
前へ 次へ
全180ページ中68ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング