は祈りの中に我れを忘れて、兄の入って来たのを知らぬ)……私たちを――私を――恐ろしい試みに逢わせないで下さいまし。友吉さんは、善い人です。あの人のように、正直にあなたを信じている人は居りません。美しい心の、やさしい人でございます。そして、あの人は今、ひどい目に逢っているのです。あの人に罪が有るとするならば、それは、ただ、あの人があなたさまを信じたという事だけでございます。あの人にとって、そのために、つかまって、ひどい拷問にかけられたり、家の人たちがセケンから迫害されたりする苦しみをこらえているよりも、兵隊になって出征してしまう事が、ズットズット、ラクなのです。それを、あの人は、あなたさまを信じたために、あなたさまの御子イエスさまのお言葉を信じたために、――そして、ただそれだけのために――死ぬよりも苦しい目を見ています。……そして、友吉さんを、あなたさまのミモトに導いてあげたのは、私の兄でございます。私を導いてくれたのも、兄でございます。(人見がピクンとする。そして、声をかけようとするが、口がパクパクするだけで、声にならぬ)兄に罪が有ったでしょうか? 神さま、あなたのお示しによって友吉さ
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