……(兄を見る。すこしもビックリしない。何かにとりつかれたような眼で、兄を見守っている)……いつ、帰って来たの?
人見 うん。……夕飯は食ったかね?
治子 じゃ、警察では、もう、帰っていいって――?
人見 いや、どうせ、また呼ばれるんだろう。
治子 そいで……友吉さんは?
人見 やっぱり同じだ。……からだが、だいぶ弱って来てるようだ。……そこへまた、お母さんも呼ばれてね……あのお母さん、警察であばれてしょうがないので[#「しょうがないので」は底本では「しようがないので」]、今、私が家まで送りとどけて来た。
治子 俊子さんの眼、どうかしら?
人見 まだホウタイが取れないで寝ていた。
治子 お医者にはかかってるかしら?
人見 さあ、あすこも金がないようだからね。
治子 どうして会社の方で、病院に入れてくれないのかしら? だって、挺身隊に出て働いてる最中に空襲を受けて眼をやられたのだから、俊子さん、りっぱな公傷でしょう?
人見 ……でも、こんなテンヤワンヤで、そんなこともチャンと行っていないんじゃないかね。
治子 ……そいで、くらしの方は、あすこの――?
人見 おやじさんの時計の修繕の仕事
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