ローソクが一本、窓の下の台の上にともっており、その光が窓にはめたささやかなステインド・グラスを照らしている。そのローソクに向かい、ユカにひざまずき、ベンチの坐板に組合せた両手を置き、それにヒタイをつけて、動かないでいる治子。……
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治子 ……(はじめ、ささやくように)神さま……わたくしたちをお助けください。……友吉さんを、お助けください。……それから、兄さんを、お助けください。……それから、友吉さんのお父さん、お母さん……明さん、妹さんを……お助けください。どうぞ、どうぞ、お助けください。神さま……(ウ、ウ! とすすり泣きそうになった声をおさえつけ、しばらく黙っていてから、つとめて静かに、「教会式」なとなえかたで)……天にましますわれらの父よ、願くばみ名をあがめさせたまえ。み国をきたらせたまえ。み心の天になるごとく地にもならせたまえ。われらの日用のかてを今日もあたえたまえ。われらにおいめある者をわれらが許すごとく、われらのおいめも許したまえ。われらを試みにあわせず、悪より救い出したまえ。国と力と栄えは、なんじのものなればなり。アーメン。……(かなり永く黙って
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