して、フラフラと立ちあがり、友吉に近づき、いきなり襟くびをつかむ)死んでしまえ! 早く死んでしまえ!
友吉 ……(その父の、ほとんど錯乱した顔を見あげていたが)お父っあん!(泣く)
義− よし、わしが、じゃ……(ふるえる両手に力を入れて友吉の首をしめはじめる。友吉抵抗せず)
人見 まあまあ、おとっつあん!
義一 わしが、わしが、此奴を生みつけたんだ! わしが殺してやる! このチキショウめ!(けんめいに力を加える)
友吉 く、苦しいよ、お父っあん[#「お父っあん」は底本では「お父つあん」]! かんにんして――
人見 ああ! ちょ、ちょ、ちょっと、そんな――(恐怖と苦悩のために、両眼が飛び出しそうな顔で、動けなくなり、畳に突っぷして、両手を組合せる。義一に首をしめられた友吉の顔が次第に土気色になって、眼が釣りあがって来る。……その間も、底気味悪いサイレンは断続してひびいてくる)
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夜の会堂。
木造の貧弱な教会の内部で、久しく集会も廃されて、あちこちと荒れすたれ、一隅は人見兄妹の起居に使用されている。粗末な木のベンチが一方に積みあげてある。
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