て行く。あとに取り残された友吉と義一と人見の三人。友吉はボンヤリして、あたりを見まわしている。義一は急に刑事たちの立ち去った理由がのみこめないでキョロキョロする。人見は苦悩に打ちひしがれて、しばらくは見も聞きもしないで石のようになっている。……断続してひびいて来る空襲警報)
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人見 あ!(不意に我れに返って、いっぺんに事態をさとって)いけない! 空襲だ! ええと、友吉君――(義一に)あんたも、この、あぶないから、――(友吉に)いつも、なにかね、そのまま、留置場に居るのかね、空襲の時は?
友吉 ええ。
人見 じゃ、早く、この――(義一に)あんたも――
義一 こんな野郎は、わしの子じゃない! わしはこんなダイソレた子を生みつけたおぼえはない! 先生、あんたを、わしはうらみますよ! なんでまた、よりによって此奴を――そうですよ、今どき、こんな奴は、日本国中に、此奴一人しきゃ居らん! わしは、うらめしい、先生!
人見 それは私も――しかし、とにかく――
義一 こんな奴を、わしの子供に生んでしまった此奴の母親を、わしあ、叩っ殺してやりたい! ――(いっているうちにカーッと
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