いる。フッと顔をあげる、こっちの暗い遠い所を、なにかを捜し求めるように、また、それをとがめるように、深い目でジッと見る。白い頬が時々ピクリとする。……やがて顔全体が、ゆがんでくる)……だれが、まちがっているのでしょうか? ……どこの国が……どんな人たちが、まちがっているのでしょうか? ……みんな、みんな、まちがっているのでしょうか? ……それとも、あなたが、まちがっていらっしゃるのでしょうか? ……みんな苦しんでいます。みんな、私たちは、どうしてよいかわからないで、死にそうになっています。……みんな、私たちは、お互いどうしで殺し合っています。……私たちを助けに、早く早く、来てください。ホントに、あなたがいらっしゃるなら――私たちを、助けに来てください。(ささやくように、暗い中を見つめている間に、次第に熱して来て、眼がキラキラと光って来る)……あなたが、いらっしゃるのが、ホントの事ならば――神さま!(ガバと、再びベンチに顔を押し当て、早口に、シドロモドロに祈りはじめる)私たちを助けに来てくださいまし! 昨日は、私たちの工場に爆弾が落ちて、私のお友達が十八人、いっぺんに死にました。そして、
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