などに出入りしたりして、おとなしい様子はしているが、もともとシベリヤ方面をウロついたりした事もある男で、いけないとなったらそれぐらい、やりかねない。
下士 いえ、そういう形跡はありませんです。
伴 そうかね、じや、訓練がすこし過ぎたんじゃないか?
下士 いいえ……はあ。……わたくしは――。
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(プツンと言葉を切って不動の姿勢で壁を見ている)
[#ここで字下げ終わり]
伴 ……(その棒のような相手の顔を見ていて、しまいにニヤリと笑って)いいさ。――だが、あまり手荒らく扱ってはいかんぞ。……医者に見せたりせんならんで、あとがめんどうくさい。……で、あの雑誌記者は、どうしてる?
下士 あれは、昨日から非常にしゃべりだしておりまして、今朝も自分から是非申しあげたい事があるといって聞きませんので、須山中尉殿の方へ、さきほど出頭させることに――はあ。
伴 例の――なには、カケて見たかね?
下士 昨日、三回ばかり。かなり効果があります。
伴 四号の男にも、かけたか?
下士 はあ。しかし、あれには、あまり効果がありません。電圧をあげますと、ただ、卒倒するだけでして――
伴 よし。
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