すもん――
人見 ……(ギクッとして、黙り、友吉を睨んでいたが、やがて苦しみのために、上体をうつぶせに畳に倒し、両手を額の所に組み合せる)ああ! 神さま! 私は――(いいかけて、自分が祈ろうとしかけている事に気附き、ビクッとして起きあがり、宗定や黒川などを、おびえた眼で見まわす。宗定も黒川も、今井も義一も、だまって人見を見守っているだけ。……カーッとして叫ぶ)それは、それは――私が君に教えてあげた事は、そういう意味じゃなかったのだ! そんな、そんな――君のように解釈するのは、まちがいだ!
友吉 殺すなかれ、なんじら互いに愛せよというのは、じゃ、あの――?
人見 ……(涙をバラバラとこぼして)君を、私は助けたいのだ! 救いたいのだ! 君の考えは、まちがっている! そうだ、そんなふうに解釈するんだったら、私のいったことは――私が君に教えたことは、まちがいだった! つまり、それは誤解であって――
友吉 ちがいます。先生には、悪魔がとりついたのです。エスさまは、そんな――
人見 ああ! 友吉君! そんな君! 君はゴーマンにとりつかれている! 君は、この世の中にたった一人で生きていると思っている
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