争もしなければならぬ。つまり、われわれが生きて行くため――肉体を生かして行くためには、好もうと好むまいと、必然的に戦わなければならんのだ。肉体自身が、そのままで一個の戦いだからね。つまり、戦争というものは、肉体にとって、やむにやめない、つまり運命なのだ。避けようとして避け得られない結果なのだ。そのように、われわれは生みつけられているのだ。そういう肉体を持ちながら――そういう肉体をたもち、永らえて行きながら、その必然の結果である戦いだけを否定するという事は、ムジュンしているんだ。いいかね? すなわち――
友吉 ですから、ぼくは、死刑になってもいいんです。
人見 君一人は、それでいいかも知れんさ。しかし、君の親兄弟や、今の聖戦で、総力をあげて戦っている全国民はどうなるかね? みんな、死ねばいいのかね? ……そらごらん! 君はまちがっているんだ。まちがっている! 絶対に、この――だから、どうか頼むから、眼をさましてくれたまい。私は――
友吉 だけど、僕を導いて、信仰をあたえてくださったのは、先生じゃありませんか。洗礼もあの――。ぼくがいっているのは、おとどし、先生がぼくに教えて下さった通りで
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