めに、バタバタと虐殺されておる! それがわからんのか、お前には! 殺されているのは、お前の同胞――つまりお前の兄弟だぞ! 兄弟を殺している、その敵がお前は憎くないのかッ!
友吉 ……(返事ができなくなる。それは、しかしあいてを怖れているというよりも、自分に理解のできない理由でもって怒っているオトナに対してトホウにくれている少年のような沈黙である)……
宗定 なぜ返事をしない! ううん? ……なぜ返事をしないのだッ!
友吉 ……はい。
義一(たまりかねて今井の腕の中で、どなる)この、チク――返事をなぜ、この――
友吉 ……(父親からいわれると、本能的にオドオドして)はい。あの……ぼくには、よくわからないもんですから――
宗定 わからない筈はないじゃないか! 現にこうして、爆弾でおれたちをひどい目にあわしている敵の奴を、お前は憎まないのかといってるんだ!
友吉 (救いを乞う目で人見の方を見ながら)……はい。でも……私たちは、互いに愛さなくてはなりませんから――(いわれて人見がギクンとして腰をあげる)
宗定 愛? 愛! ……すると、なにか、敵でも愛さなきゃならんのか? いや、なきゃならんじゃ
前へ
次へ
全180ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング