なるだけである事も知っている。――その絶望と、ふんまんと、更に此の際にまで相変らずの事をいって落着いている友吉へのアキレとの入りまじった沈黙。……間)
[#ここで字下げ終わり]
宗定 ……(やっと自ら気をひき立てるようにして)ふむ。いや、もうこれまでにいうだけの事はお互いにいいつくしておるし、キリスト教の教義についての議論も、もうたくさんだ。同じ事をなん百度くりかえしても、しかたがない。……だけど、今日は最後だから、ホンのひとこというがね、お前がそうして召集に応じないと、けっきょく、お前自身身の上――つまり命がだな、どういうことになるか、知っておるね?
友吉 ……はい。(コックリをする)
宗定 それでいいんだね?
友吉 ……はい。エスさまのために、私は……
宗定 (たまりかねて、どなる)ヨマイごとをいうのは、よせッ!ぜんたい、そいつは、どこの馬の骨だッ!エスさまなんかよりゃ、わが国には上御一人、つまり天皇陛下がいられる事を、お前は忘れたのかッ!
友吉 (びっくりしてオドオドする)いえ、そ、そんな――
宗定 第一だ、わが国民が今イチガンとなって戦って――この、戦線でも、銃後でもだ、敵のた
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