から、ニコニコしながら友吉に)なあ! 今日は警察の者としていうんじゃないよ。国民の一人として――つまり、君も僕も国民どうしとしてだなあ、いうんだが――どうだね、ここいらで、気を入れかえてつまり心気一転して、これまでの事は、いっさいなかったことにして、出直してくれんか。こうして、われわれも、そいから、君の家の人たちも、(人見をアゴでさして)先生もだねえ、困りきっているんだから、どうだろうね?
友吉 ……(スナオに頭をさげる)すみません。(つづいて父親の方へも人見の方へもおじぎをする)……すみません。
義一 すまないと思ったら、すぐに、今日にでも――
宗定 おやじさん、君はいっとき、だまっとれ!(友吉に)……ほんとに、じゃ、すまないと思うんだね?
友吉 はい。みなさんに、御心配をかけて――
宗定 じゃ、召集に行ってくれるね?
友吉 ……それは、あの――
宗定 え? 出征するんだね?
友吉 いいえ。
[#ここから3字下げ]
(一同がシーンとしてしまう。友吉の無邪気な答えに、一同はこれまでに馴れている。しかしまた、この無邪気さが、とうてい抵抗することのできないものであり、この後はただ押し問答に
前へ
次へ
全180ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング