――
明 俺あ、こんど兄さんに逢ったら、俺あ、この腕で、兄さんを――(クククと泣き出し、せぐりあげてヒーッという)
北村 いいよ、いいよ、そんな君――君の気持はわかる。よくわかる。だから――
明 俺あ、俺あ、兄きとはちがうんだ! 俺あ、来年早々、志願して出ようと思ってるんだ。俺あ日本人だ。俺あ、こんなとこでベンベンとして器械の組立てなんぞやってはいられないんだ。俺あ日本人のためなら、死ぬことなんかヘイキだ。俺あ、やって見せる。見ろ! 九軍神が、なんだ! あれ位のこと、いつだって、俺あ、やって見せる――それを、それを、班長の奴、「九軍神に対しても恥かしいと思え!」……どんな、どんな事をしたから、俺が、恥かしいと思わなきゃならないんだ! 俺が、兄きの弟だと言うだけじゃないか! それも、それも、その事をいって、ハッキリとその事をいって、やっつけるんなら、まだ、いいんだ! 当のその事は、カゲにまわってコソコソいうだけで、表むきにゃ、なんにもいわないで、仕事のことで、俺の組立にケチをつけちゃ、事ごとに俺の成績をおっことしにかかるなんて、――いや、そうなんだよ、みんな班長や組長にオベッカをたれや
前へ
次へ
全180ページ中33ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング